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分子レベルの変動から生命活動の状態を診断する

生物体内で機能するある種の物質群を総体的に捉えることで、生命現象を理解しようとする手法をomicsといいます。遺伝子の総体(genome)をあつかうのがGenomics、タンパク質の総体(proteome)をあつかうのがProteomicsです。

細胞、組織あるいは生体内のmetaboliteの総体であるメタボローム(metabolome)を扱うMetabolimicsは、生体内のさまざまな代謝経路の状態の変化を化学的に捉えることでGenomicsProteomicsとは異なる領域で生命現象を解明するための解析手法です。

生命分析化学研究室では、アミノ酸や有機酸、糖類の分析を“より高精度に”そして“より簡単に”、“より少ない試料量で”できるように分析方法の改良・開発に取り組み、Metabolomics研究の推進に貢献しています。

北極圏土壌の分析を通して、気候変動のメカニズムに迫る

温暖化の進行により、陸域面積の 1/4 を占める永久凍土の融解が進むと大量の温室効果ガスが放出され、温暖化を加速化することが危惧されています。このような、全球気候を激変させる恐れのある永久凍土融解の発生リスクを正確に予測するため、ツンドラ火災による凍土撹乱を含めた気候モデルの高精度化が重要だと考えられています。現在のモデルによる温暖化フィードバック予測に大きな誤差をもたらす要因として火災頻度推定の不確かさがあります。この不確かさの一部は、衛星観測以前の記録が皆無で検証データが欠如していることによるものです。

生命分析化学研究室の熊田グループでは、国立環境研究所との共同研究で、ブラックカーボン(BC)、燃焼生成有機分子(PAHs、Retene)等の燃焼生成マーカー物質を用いて過去の火災イベントを復元するための手法(=燃焼記録プロキシー)の開発に取り組んでいます。開発した手法をアラスカツンドラ域の環境試料に適用し、過去 0.5〜1 万年の火災履歴の復元することで機構モデルの精度向上に貢献することが期待できます。

バイオマス燃焼由来物質の分類:燃焼生成物質は構造や物理・化学的特徴が連続的に異なる炭素系物質の集合体(Hedges et al., 2000)で、生成温度によって反応性(保存性)や輸送範囲(古環境トレーサーとしての有効範囲)が異なる

燃焼記録プロキシーの概念図;様々な燃焼起源からは存在形態や 14C 年代が異なる炭素系物質が放出される。それらの堆積履歴を形態別分析と極微量スケール AMS–自然レベル 14C 測定を利用して、個別に復元する

Benzyl acetate (酢酸ベンジル)

酢酸をベンジル=ブロミドで処理して得られる誘導体。メタボローム分析でGC-MSを使用する際、極性化合物の揮発性をあげるためにベンジルエステル誘導体化を行った場合、酢酸は酢酸ベンジルとしてピーク検出、定量することになる。

EI mass spectrum of benzyl acetate.

酢酸ベンジルは多くの花に見られ、特にジャスミンイランイラントベラクチナシなどの精油の主成分である。これ自体がジャスミン様の甘い香りを持っており、香水化粧水に使われる[2]。またシタバチ類のオスを誘引する化合物(フェロモン)の一つでもあり、研究のためにこれらのハチを捕まえる際の罠に使われる[3]。さらに、酢酸ベンジルはプラスチックや樹脂、酢酸セルロース硝酸エステルなどを溶かす溶媒としても用いられる。脂溶性が高く、皮膚に触れると脱脂を起こす。

https://ja.wikipedia.org/wiki/酢酸ベンジル
  • 分子式:C9H10O2 
  • #CAS:140-11-4
  • 法規:消防法 第4類危険物 第3石油類 / 労働安全衛生法 第57条の2(SDS交付義務) / PRTR法 PRTR-第2種指定化学物質

生命、環境、生態系を解き明かす分析化学

地球上に生命が誕生してから、生命とそれを取り巻く物質世界の相互作用の歴史によって現在の地球環境が作られました。産業革命以来の人間活動は、かつてない速度と規模をもってその相互作用の仕組みを変え、地球環境をも変化させています。そのような環境影響や環境変動を早期に検出し、定量的に評価することは、 人類の営みを持続可能なものとするうえで重要な課題です。我々の研究グループでは、環境中の化学物質をプローブとして利用した環境評価手法の開発や、それを利用した環境評価のための研究を行っています。また、環境問題の本質は人々の日常生活に根ざしているので、多くの人が環境に目を向け、環境の質を評価することが重要です。そのために、簡易環境モニタリング手法、簡易分析法を開発し、人々の化学環境の理解を助けるための取り組みも行っています。