EDTA (エチレンジアミン四酢酸)
Fe3+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Ag+、Ca2+、Zr4+ など1価、2価、3価、4価の金属イオンと下図のような構造のキレート錯体を形成する。その金属封鎖能から、洗剤や酸化防止剤として広く利用される。EDTAの他にも-N(COOH)2を複数持ち金属イオンとキレート錯体を形成する化合物が数種類存在し,それらを総称してアミノポリカルボン酸系キレート剤(Aminopolycarboxylic acids; APCs)と呼ばれる。APCsは化学的に安定なため、下水処理過程で除去されず、水環境へ流入する。その安定な性質から、下水処理水の汚染範囲を判定する分子マーカーとしての利用可能性が注目、検討されている。
微生物による分解を受けにくいため、水処理としてはやや難易度の高い処理が必要である。一般に次亜塩素酸ナトリウム添加による酸化分解法が採られるが、重金属等の共存下では事前実験が必要である。ヨーロッパでは使用が規制されている。また、世界保健機関では、飲料水水質ガイドラインとして、0.6 (mg/L)と定めている。これは、EDTAが亜鉛をキレートして、飲料水から亜鉛が摂取できなくなり、亜鉛欠乏に陥ることもあることを懸念しての策である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/エチレンジアミン四酢酸
生命、環境、生態系を解き明かす分析化学
地球上に生命が誕生してから、生命とそれを取り巻く物質世界の相互作用の歴史によって現在の地球環境が作られました。産業革命以来の人間活動は、かつてない速度と規模をもってその相互作用の仕組みを変え、地球環境をも変化させています。そのような環境影響や環境変動を早期に検出し、定量的に評価することは、 人類の営みを持続可能なものとするうえで重要な課題です。我々の研究グループでは、環境中の化学物質をプローブとして利用した環境評価手法の開発や、それを利用した環境評価のための研究を行っています。また、環境問題の本質は人々の日常生活に根ざしているので、多くの人が環境に目を向け、環境の質を評価することが重要です。そのために、簡易環境モニタリング手法、簡易分析法を開発し、人々の化学環境の理解を助けるための取り組みも行っています。