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北極圏土壌の分析を通して、気候変動のメカニズムに迫る

温暖化の進行により、陸域面積の 1/4 を占める永久凍土の融解が進むと大量の温室効果ガスが放出され、温暖化を加速化することが危惧されています。このような、全球気候を激変させる恐れのある永久凍土融解の発生リスクを正確に予測するため、ツンドラ火災による凍土撹乱を含めた気候モデルの高精度化が重要だと考えられています。現在のモデルによる温暖化フィードバック予測に大きな誤差をもたらす要因として火災頻度推定の不確かさがあります。この不確かさの一部は、衛星観測以前の記録が皆無で検証データが欠如していることによるものです。

生命分析化学研究室の熊田グループでは、国立環境研究所との共同研究で、ブラックカーボン(BC)、燃焼生成有機分子(PAHs、Retene)等の燃焼生成マーカー物質を用いて過去の火災イベントを復元するための手法(=燃焼記録プロキシー)の開発に取り組んでいます。開発した手法をアラスカツンドラ域の環境試料に適用し、過去 0.5〜1 万年の火災履歴の復元することで機構モデルの精度向上に貢献することが期待できます。

バイオマス燃焼由来物質の分類:燃焼生成物質は構造や物理・化学的特徴が連続的に異なる炭素系物質の集合体(Hedges et al., 2000)で、生成温度によって反応性(保存性)や輸送範囲(古環境トレーサーとしての有効範囲)が異なる

燃焼記録プロキシーの概念図;様々な燃焼起源からは存在形態や 14C 年代が異なる炭素系物質が放出される。それらの堆積履歴を形態別分析と極微量スケール AMS–自然レベル 14C 測定を利用して、個別に復元する