専門分野 (Research Fields)
Analytical Chemistry, Biochemistry, Plant Physiology, Environmental Chemistry
キーワード (Key words)
Lipidomics, Metallomics, Metabolomics, Transcriptomics
現在の研究テーマ (Current Research Themes)
リピドミクス技術を用いた新規有害化学物質の生物検定法の開発
医薬品や化粧品などに使用される化学物質は我々が快適に生活するための必需品となっている。使用された化学物質は生活排水などを通じて環境中に排出されており、生態系に対する影響が懸念されている。しかしながら環境中に排出された化学物質に含まれる化学物質が生態系に及ぼす影響は不明な点が多く、生物に及ぼす影響を迅速に評価するための方法の開発が求められている。本研究では、化学物質が生態系影響評価モデル生物であるシアノバクテリアの生体物質組成に及ぼす影響をLC-MS/MSを用いてメタボローム解析して、化学物質を検出するためのバイオマーカーを探索している。
Focusing on some hazardous compounds and its stress responses in microorganisms especially in microalgae and cyanobacteria.
フェニルボロン酸固定化有機ポリマーモノリス担体を利用した糖複合体の捕集・精製・濃縮前処理デバイスの開発
糖脂質や糖タンパク質のような糖鎖を有する生体物質は、がん等の疾患の早期診断マーカーとして注目を集めている。これらのマーカー物質は存在量が極めて少ないため、測定に先立ち、濃縮や夾雑成分の除去等の前処理操作が不可欠となる。糖のような隣接したジオール基を有する化合物は、塩基性条件において、フェニルボロン酸と可逆的な結合体を形成することが知られている。この性質を利用すれば、糖鎖を有する生体物質を選択的に捕集できると期待される。我々は、フェニルボロン酸を官能基とした種々の有機ポリマーモノリス型担体を試作して、糖類の捕捉特性を評価している。
ミドリゾウリムシとクロレラの細胞内二次共生過程における生体膜脂質組成の解析 – 共同研究
ミトコンドリアや葉緑体といったオルガネラを生み出した細胞内共生は、細胞の中に細胞が共生することにより新たな機能と構造を獲得する機会を生物にもたらす細胞進化の大きな原動力となっている。真核細胞の進化過程を解き明かす上で、細胞共生がどのように成立し、維持されているのかを分子レベルで詳細に理解することが求められる。本研究では、ミドリゾウリムシとクロレラの細胞内二次共生過程における生体膜脂質組成をリピドミクス技術を用いて解析している。
Collaborators: Toshinobu Suzaki (Kobe University)
ナノワイヤを利用した生体物質のマトリックスフリーレーザー脱離 イオン化質量分析 – 共同研究
生体物質の質量分析ではマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS)などが用いられているが、この方法ではマトリックス由来のイオンがノイズとして検出されてしまい数百Daの低分子領域の測定が難しい。生体物質には1 kDa以下の低分子も多く、MALDIによる測定が困難である。一方で、ナノスケールの表面構造がレーザー脱離イオン化を支援する(SALDI)ことを応用して、マトリックスなしで生体物質試料をイオン化させることで低分子量試料の測定が容易になるとの報告がある。また、ナノ構造体には物質の分離能を持つという研究報告がある。我々は、ナノ構造体の一種であるナノワイヤを被覆したガラスプレートを、薄層クロマトグラフィー担体として生体物質を分離、およびマトリックスフリーでの生体物質の質量分析に利用できるのではないかと考えた。そこで本研究では、新規の生体物質分離検出法として、このナノワイヤ被覆超薄層クロマトグラフィー(nUTLC)とナノワイヤSALDIを組み合わせた、nUTLC-SALDI-MS分析法の開発に取り組んでいる。
Collaborators: Hiroaki Sato (AIST), Takao Yasui (Nagoya University)
単一細胞メタロミクス解析手法の開発 – 共同研究
生命の基本単位は細胞であり、この細胞中では遺伝子やタンパク質発現、代謝、成長・分化、増殖等の様々な生命の基盤となる活動が行なわれている。各々の細胞は高次の情報性や応答性を有しており、近年、同じ組織を構成する細胞であっても1つ1つの細胞でかなりの違いがあることが分かってきた。組織レベルの平均的な情報の収集では不十分であり、組織、あるいは多数の細胞集団を1細胞ごとに分析して、物質組成の違いを包括的に解析することが重要となる。そこで本研究では、多数の細胞を1細胞ずつに分画、整列させる新規なマイクロデバイスを作製し、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)を用いてマイクロデバイス上に配列させた細胞試料中の多元素同時検出を試みている。
Collaborators: Yanbei Zhu (AIST), Takao Yasui (Nagoya University), Agilent Technology
単一細胞の多元素同時マイクロイメージング質量顕微鏡法の開発 – 共同研究
細胞内共生の研究で注目されているミドリゾウリムシとクロレラの共生メカニズムの解析の先行研究から酸化還元や抗酸化に関わるタンパク質の活性中心となる金属元素が、細胞内共生成立過程において細胞内で重要な役割を果たしているものと推定される。そこで本研究では、細胞内共生成立過程における金属元素の局在や挙動の解明のための基盤技術の開発を目指して、ミドリゾウリムシ(大きさは200 μm程度)を分析対象として、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)を用いた単一細胞元素イメージング法を開発している。
Collaborator: Takafumi Hirata (University of Tokyo)
長鎖ノンコーディングRNAの機能解析 – 共同研究
ヒト肝癌細胞であるHepG2細胞のnon-coding RNA; ncRNAに着目し、化学物質によって発現量が増加するncRNAを同定できれば、それを生体影響評価のための新規マーカーとして動物実験に替わる生体影響評価法を開発できるという仮説のもと実験を行っている。ncRNAはタンパク質へ翻訳されないが、複数の化学物質に対し鋭敏な応答を示すことが知られており、がん診断マーカーとして利用されているものも存在する。
Collaborator: Hidenori Tani (AIST)
たんぽぽ計画 (Tanpopo mission) – 共同研究
「Tanpopo」(たんぽぽ)は綿毛のついた種子を風に乗せてまき散らします。「たんぽぽ計画」研究グループ(代表:東京薬科大学 山岸明彦)は、ISS-JEM(国際宇宙ステーション・日本実験棟)上での微生物の天体間の移動の可能性の検討と微小隕石の検出および生命の材料となり得る有機化合物の解析実験を提案しています。我々の研究グループでは、サブテーマの一つ「「地球微生物の宇宙生存」微生物の曝露実験」に参画しています。
このサブテーマでは、微生物が地球を脱出した場合、他の惑星に到達するのには時間がかかります。あるいは火星等地球以外の生命を育む可能性のある太陽系天体を脱出した微生物が地球に到達するまでには時間がかかります。移動する間に微生物が生存できるかどうか?宇宙空間で紫外線や宇宙線を浴びた状態での生存可能時間を宇宙実験で推定します。
我々のチームでは、谷口紀恵さん(修士課程)と野呂幸佑さん(卒研生)が宇宙暴露された微生物の細胞に含まれる核酸や色素を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)や質量分析計(MS)を駆使して分析しています。
Collaborators: Yuko Kawaguchi (Chiba Institute of Technology), Shinichi Yokobori (TUPLS), Hirofumi Hashimoto (ISAS), Akihiko Yamagishi (TUPLS)
これまでの研究プロジェクト
- 青木元秀,「微細藻類の脂質プロファイリングに関する研究」
共同研究機関 産業技術総合研究所, 2013/7/1-2014/3/31
- 藤原祺多夫, 青木元秀.「機能性食品素材の分析技術の開発とin vitroでの評価系の確立」
共同研究株式会社セラバリューズ, 2012/4/1-2015/3/31
- 藤原祺多夫, 青木元秀.「食品の分析技術開発」
共同研究者 大塚喜彦(株式会社セラバリューズ サイエンスグループ学術部), 2011/4/1-2012/3/31
- 青木元秀,「CAM植物・葉ミトコンドリアのATP合成能調節機構に関する研究」
共同研究者 是枝晋(埼玉大学), 2009/4/1-2010/3/31
- 藤原祺多夫, 青木元秀.「疾病予防機能および機能性食品の効能に関する高性能評価法の開発」
受託研究, 株式会社ナノビオテック, 2006/4/1-2007/3/31