生物が生活している自然環境は、季節により、また、一日の中で も大きく変化します。絶えず変化する温度条件や光条件のもとで、生活するために植物や藻類は自分自身のからだを変化させて対応します(たとえば、光合成生 物は光環境を感知する仕組みを持っていて、光の強さに合わせて、光合成に関係した酵素の含量を増減させています)。それらの機構に関しては、まだ遺伝子発 現の調節の仕組みの面など、分子レベルでは分かっていない事が多くあります。
現在、主に取り組んでいるテーマは、
1.微細藻類に及ぼす環境要因の影響: 培養中の光、乾燥が微細藻類、特に、 シアノバクテリア(ラン藻) にどのような影響を及ぼすのかについて解析しています。特に、強すぎる光や乾燥しすぎの状態にどのようにして耐えるかを分子レベルで解明したいと考えています。
2.光化学系II 構成タンパク質の機能: 光 合成において、光エネルギーを化学エネルギー(酸化還元反応)に変化し、酸素を発生する場である光化学系II は多くのタンパク質からなるタンパク質複合体です。その複合体を構成する成分の一つPSII-Kタンパク質の機能を明かにするため、シアノバクテリアを用 い、その遺伝子を破壊した変異株を作製しました。その遺伝子を破壊すると光合成活性や生育がどの様な影響を受けるか調べています。
3.シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803におけるグルコース利用機構: シ アノバクテリアは通常、光合成によってエネルギーを獲得して成育しますが、PCC6803株はグルコースを利用した呼吸によるエネルギーを利用して生育す ることも可能です。しかし、完全な暗条件ではしばらくして生育が停止します。光合成出来ないぐらいの弱い光を時々当てると生育が維持されるのですが、その メカニズムを調べています。 その他、円石藻などのタンパク質の配列を調べたりしているのを手伝ったりもしています。
(所属学会)日本植物生理学会、日本植物学会.