あけましておめでとうございます。
皆様、本年も再生医科学研究室をどうぞよろしくお願いいたします。
来年こそ、臓器創生に一歩近づきたい…と大晦日に考えていたところ、
実家で保護され越冬中の、アゲハのさなぎが目にとまりました。
(虫さんが苦手な方は、どうかこのページは飛ばしてくださいね🙇♀️)
↓
↓
↓
昆虫は、卵から成虫に成長する間の形態変化のタイプによって、
完全変態(チョウ、ハエなど。幼虫→蛹→成虫の成長過程で形態が大きく変化)と
不完全変態(バッタ、カマキリなど。孵化後から形はほぼ変わらずサイズ成長のみ)に分類されます。
そういえば、あのムチムチ芋虫は、どうやって空飛ぶチョウチョになるのか?
ムチムチは一体どこに?翅はどこから現れた?どうして正しい位置にできるの?と、
自分が昆虫の変態機構を全く知らないことに気づいたので、調べてみました。
完全変態型の昆虫の多くは、幼虫時代から既に、成虫原基(Imaginal disc)と呼ばれる器官を持っており、
これらが将来、翅、肢、触覚など成虫の体を形づくる部位に分化します。
重要なことに、幼虫体内での成虫原基の位置は、成虫のボディプランとほぼ一致するそうです(下図1のA,B1)。

ではムチムチたちは一体どこに消えたのでしょう?
実はムチムチを構成する細胞組織は、蛹化後、酵素によって溶かされドロドロになります。
ドロドロは成虫原基の細胞増殖を促進する栄養となったり、不要であれば排出されるそうです。
最近ではMRIやCT技術の発展がめざましく、同じ蛹を生きたまま、長期間のライブ観察もできるようになったため、
成虫原基が劇的に成長するタイミングも解明されつつあります2。
この成虫原基を構成する細胞は、孵化前の成熟卵の時点で決定されているのか?後天的決定か?(エピゲノム?3)
幼虫時代に成虫原基の分化が進んだりしないのか?など、今もわかっていないことは沢山あるそうです。
成虫原基が劇的に成長するタイミングや、適切なボディプランの制御機構の解明は、
哺乳類の臓器発生・創生を考える上でも重要なポイントとなりそうです。
- Aldaz S and Escudero LM, Imaginal discs, Current Biology, 20(10):PR429-R431 (2010)
- Ikegami et al., Morphological Observation of the Pupal Body of Trypoxylus
dichotomus Using 9.4T MR Imaging, Magn Reson Med Sci., 23:242-248 (2023) - 増子恵太ら, ショウジョウバエ成虫原基の器官運命決定転換におけるクロマチン制御機構, 生化学, 92(1):124-129 (2020)
—————————————————————————————————————————————————–
今回で終了の可能性大ですが…覚えていたら四季に1回くらい、ゆるく更新する予定です。