●タンパク質のシミュレーション
a) がん原遺伝子(Ras 遺伝子)がコードしている Ras タンパク質の分子動力学法による研究
GTP と結合している Ras タンパク質に分子動力学法を適用するために、GTP, Mg2+ イオン周辺の力場を量子化学計算を用いて作成しています。
b) タンパク質の繊維化のシミュレーション
分子動力学法を用いて、タンパク質を天然構造を保持したまま繊維化させることを目指しています。繊維としての安定性を比較するために、アンブレラサンプリング法により自由エネルギー差を算出しています。
また、現在扱うタンパク質に含まれる金属を量子計算することを試みています。
c) ペプチドの細胞膜透過のシミュレーション(川本周平氏(客員研究員)らによる研究)
(左下図)脂質二重膜とペプチド(赤色部分)と(右下図)ペプチドによる逆ミセルの形成の様子
●生命現象のシミュレーション
a) バクテリアコロニーにおける微視的挙動の理論的研究
バクテリアが寒天培地上で作る様々なコロニーのパターンについて、個体レベルから解析できるモデルを考案し、計算機シミュレーションによるコロニー形成過程の研究を行っています。
同じ運動能をもつ個体であっても、誕生時における位置の違いによって、
個体レベルの運動に質的な相違が生じることがわかっています。
b)真性粘菌のアメーバ運動のモデル化に関する研究
粘菌変形体内における原形質流動と細胞膜の粘弾性、そして細胞骨格の重合と脱重合という、3つの要素をカップルさせた数理モデルを構築し、様々な環境シグナルに対して、
それらがどのような応答を示すかを、コンピュータシミュレーションによって解析しています。
●ソフトマターのシミュレーション
ソフトマター材料の中でも、ゲルは人工軟骨、コンタクトレンズ、眼の手術の材料などに使われていて、
生命に役立つ重要な材料です。私たちは東京大学の実験グループと共同で、ゲル材料のシミュレーションを行っています。
ゲルの強度を上げるためには、なるべく均一な構造が望まれますが、構成要素であるモノマーに
どのような材料を使えばよいか、実験研究者に示唆を与えることができます。
特に正四面体型ゲルに関して、構造やダイナミクスの解析をシミュレーションを用いて行っています。
●教育方針と主な就職先
教育方針
研究を進めると同時に、毎週のセミナーを通じて、発表能力、表現能力を高めます。研究成果がまとまったら、学会や研究会で発表を行います。また英語能力の向上にも力を入れており、
研究成果が出て、国内学会での発表を行った者には、次のステップとして国際会議で堂々と英語で話せる力を養成します。
共同研究
当研究室は学内(生命科学部・薬学部)の他の研究室や他大学との共同研究を積極的に進めています。学内では、細胞機能学研究室、環境衛生化学研究室、薬学部病態生化学研究室との共同研究を行っています。
学外では、京都大学化学研究所、金沢大学との共同研究を行っています。
習得できるスキルと主な就職先
当研究室では、コンピュータが研究の重要な道具であり、UNIXやC言語の習得ができます。修士課程に進学すると、いろいろなプログラムをC言語で自由に作る能力を育成します。
情報処理に関する資格を取得することも可能です。 当研究室の修士課程の学生は、
生命科学だけでなく、コンピュータの知識も持っています。
生命とコンピュータの2つの分野で就職先を探すことができ、就職が難しい最近の厳しい環境の中で
強みを発揮しています。
これまでの修士課程修了者の進路は、日立東日本ソリューションズ、NTTデータテクノロジー、
中外製薬、博士課程などがあります。