第6回生命科学セミナー
日時: 10月18日(水)17時〜
場所: 研究3号棟12階 セミナー室 G

 

演題1
池田 直輝 さん
免疫制御学研究室 D3
「炎症の回復期に出現する炎症抑制性単球の同定」
 
 マクロファージは炎症期において炎症を促進する一方で、回復期には炎症の抑制に寄与することが報告されている。このようなマクロファージの形質の違いを説明する概念として、炎症型のM1マクロファージと抗炎症型のM2マクロファージに分類するM1/M2モデルが提唱されている。しかし、このモデルは培養細胞を用いた実験結果に基づいて構築されたものであり、実際に、生体内でM1/M2様のマクロファージが存在するかどうかは不明である。本研究で我々は、M2マーカー遺伝子の1つであるYm1の発現を可視化できるマウス(Ym1-Venus)を用いて、炎症の回復期にM2マクロファージ様の細胞が出現すること、およびこのマクロファージがその前駆細胞である単球の段階から規定されている可能性を初めて明らかにした。これらの知見は、マクロファージや単球による炎症制御機構を解明する有力な手がかりとなり得る。

 

演題2
工藤 光野 さん
ゲノム病態医科学研究室 D3
「CD63発現の増加はBRAF変異メラノーマ細胞のBRAF阻害剤耐性を抑制する 」

 メラノーマは致死性の皮膚癌で、その半数以上の症例でBRAF遺伝子の恒常的活性化変異が認められる。BRAF阻害剤はメラノーマの治療初期で高い奏功性を示しているが、ほぼ全ての症例において薬剤耐性が生じる。そのため、メラノーマの薬剤耐性獲得を抑制する新規の治療法が必要とされている。メラノーマ関連抗原CD63は、メラノーマの進行に伴い発現が減少する膜糖タンパク質で、種々の受容体などと結合し、その局在や活性を制御することで細胞の分化、増殖、移動などに関与する。乳癌細胞のCD63は薬剤耐性分子の細胞膜移行を促進することで薬剤耐性に寄与するとの報告があるが、メラノーマ細胞においてBRAF阻害剤耐性に関与するかは不明であった。今回、我々は乳癌細胞とは異なり、メラノーマ細胞ではCD63がBRAF阻害剤存在下での細胞増殖を顕著に抑制することを見出したので報告する。

 

演題3
丸山 智広 さん
分子細胞生物学研究室 D3
「DDHD2(細胞内型ホスホリパーゼA1)の生体内の役割とその機能喪失による神経疾患発症機構」

 脂質の恒常性を正常に保つことは細胞にとって極めて重要であり、その均衡が破綻すると様々な疾患が誘発される。哺乳類細胞内型ホスホリパーゼA1ファミリーはDDHD1/PA-PLA1、Sec23ip/p125、DDHD2/KIAA0725pの3種で構成され、それぞれ細胞内局在や酵素活性が異なる。DDHD2は、緩徐進行性の下肢痙縮を伴う遺伝性痙性対麻痺(HSP)の原因因子の1つであり、この遺伝子を欠損させたマウスではHSP様の症状が引き起こされる。今回の生命科学セミナーでは、DDHD2欠損マウスを用いたin vivoおよびin vitroの解析結果を報告する。DDHD2欠損マウスでは、月齢に伴って運動ニューロンが選択的に脱落し、その主因はミトコンドリアから産生される活性酸素であることが判明した。この活性酸素の発生原因は、酸化脂質の蓄積によると考えられ、DDHD2が酸化脂質の分解を行って脂質の恒常性を維持している可能性が示唆された。

 

問い合わせ先:
生命科学セミナー担当
分子生化学研究室 柳 茂