大滝さん、大石くん、安部くんら (環境応用植物学研究室) の論文が Bioresource Technology誌に受理されました。

 

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淡水性の緑藻Chlorella kessleri (以下、クロレラ)は、油脂の主成分であるトリアシルグリセロール(以下、TG)の蓄積能力に秀でた、いわゆる油性藻です。藻類は一般的に、種々の環境ストレス下、細胞内にTGを蓄積します。TGは産業的には食用油やバイオ燃料の生産に利用されるため、藻類を利用したTG蓄積に関する研究が世界的に盛んです。環境応用植物学研究室はこれまで、異なる環境ストレス種を混合してクロレラ細胞に負荷すると、そのTG蓄積能が大幅に強化されることを見出しています。特に、海水を培地に利用することで生じる栄養欠乏と高浸透圧の2種のストレス、さらに低温と強めの光の各ストレス、これら計4種のストレスを同時にクロレラ細胞に付加すると、そのTG蓄積量は処理後わずか3日で細胞乾燥重量の約半分にまで達します。これは世界的に見て、藻類での最高レベルのTG蓄積能と言えます。

 

今回の論文では、海水ストレスに相当する、栄養欠乏と高浸透圧の混合ストレスがクロレラのTG蓄積能を強化する仕組みを、その主要炭素化合物の代謝への影響を調べることで明らかにしました。その結果、栄養欠乏ストレスは、タンパク質の合成を抑制し、同時にデンプンの分解を促進することで、炭素代謝流を脂肪酸の合成へと大きく偏らせる、そしてその脂肪酸を膜脂質ではなく、TG合成に優先的に向かわせる作用がありました。一方、高浸透圧ストレスは、栄養欠乏ストレスがもたらす炭素代謝変動の度合いを強める作用がありました。さらに、これらの炭素代謝変動は、関連する酵素遺伝子の発現レベルの上昇で説明されました(図1)。藻類でのTG生産は安価な海水を利用することで、その経済性が高まると期待できます。本研究の成果は、この経済性に優れたTG生産系を支えるクロレラ細胞の分子機構を理解するための、そしてクロレラを含めた藻類でそのTG蓄積能をストレス生物学的視点から、あるいは遺伝子操作により強化するための基盤となります。

 

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図1 栄養欠乏(NL)と高浸透圧(HO)の混合ストレス条件下、各単独ストレスが主要炭素代謝系に示す作用 イタリック文字は、各炭素代謝経路に関連する酵素遺伝子を示す。

 

 

大滝さん、大石くんから喜びの声が届きました。

 

これまでの研究を通じてチームワークの必要性を学ぶことができました。この事を特に強く感じたのは、実験が失敗に終わった時に、原因の究明や解決方法を相談し、改善しながら研究を進めることができた時です。先生や研究室のメンバーに相談することで、着実に成果を出すことができました。ご指導してくださった先生をはじめ、先輩、同期、後輩から頂いたアドバイスや協力なしでは、この研究を成し遂げることはできませんでした。社会人になってからも、問題を一人で抱え込まずに周りの意見を取り入れ、良い結果を残していきたいです。最後に、この研究を支えてくださった皆様に心から感謝申し上げます。(2019年3月 大学院 修士課程 修了、現 全薬工業(株) OTC開発部 勤務 (香粧品開発課にて敏感肌用化粧品の開発に従事) の大滝理恵さんより)

 

大滝先輩の修論を手助けするため、この研究に協力しました。短期間で再現のあるデータを出すため土日も研究室に通い、朝から晩まで実験を行いました。苦しく感じた時もありましたが、メカニズムが明らかになっていく喜びや、実験の待ち時間に先輩とご飯に行ったり、神社にお参りしたりと楽しい時間もあり乗り越えられることができました。先輩が3年間、力を入れたこの研究に携われることができ嬉しく思っています。 (大学院 修士課程 2年 大石裕太郎くんより)

 

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