進化工学 Evolutionary engineering

evolutionary engineering

工学では予めわかっている原理に基づいて設計図を画きその設計図に従ってものを製作する。しかし現在の生化学の知識では、希望する機能を発現するようにタンパク質や核酸などの生体高分子を設計することはできない。そこで、生物の進化の原理を利用して希望する性質や機能を持つ生体高分子を獲得しようというのが進化工学である。

生物の進化の過程では、たくさんの異なった子孫の中から最適者が選択される。進化工学では、この進化の原理をタンパク質や核酸設計に応用する。進化工学ではまずランダム(でたらめ)に遺伝子に変異をいれて、できる限りたくさんの異なった変異型遺伝子を作り出す。その変異型遺伝子から変異型タンパク質(あるいは核酸分子)を作製して、その中から自分の欲しい性質のタンパク質(あるいは核酸分子)を作る遺伝子を選び出す。こうして、設計原理が未知であっても希望の機能や性質をもつ高分子を得ることができる。これが進化工学である。また進化工学は、得られた遺伝子のどこがどう変わったかを調べることにより高分子設計原理を研究するためにも威力を発揮する。

進化工学は進化分子工学あるいは試験管内進化ともよばれ、また人工的にタンパク質をある希望の方向に進化させるので「定向進化」ともよばれる。人間が家畜や農作物を改良することを育種ということになぞらえて「分子育種」とよばれることもある。

さらに詳しい内容を知りたい方は以下の日本語の総説、本を参考にしてください: 第3章 タンパク質の進化分子工学的耐熱化第一章生体ナノマシンの分子 設計の戦略:1-3 分子進化の方法進化分子工学を利用した蛋白質分子育種の実例 3)耐熱性酵素の低温適応原始生態系と生命の初期進化

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