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研究テーマ

私たちを取り巻く自然環境やあらゆる生命現象は化学反応の連鎖によって成り立っています。この化学反応の歯車が狂うことによって疾病等の問題が生じます。したがって、この化学反応のネットワークを紐解くことができれば、生命の本質に迫ることができ、さらには治療や環境問題の解決にも繋がっていくと期待されます。
本研究室では、生体や生命環境を“化学の目で覗く新しい窓”となる分析技術の開発に取り組むとともに、得られた実験データを統合的に解析することによって、生命現象を分子レベルのシステムとして理解することを目指します(システム生物学・オミックス研究)。

これらの研究を通して、生命の仕組みを理解し、創薬・ヘルスケアや環境問題の解決に貢献していきたいと考えています。


低侵襲・非侵襲な試料採取法と疾病の早期診断(メタボロミクス)

超高齢社会において健康寿命の延伸が強く望まれています。血液一滴、あるいは尿や呼気などの苦痛を伴わずに採取できる試料を用いて、体調のわずかな変化や疾病を察知することができる早期診断技術の開発が注目されています。そこで重要となるのは、生体内における代謝反応に関与する親水性の化合物群(Metabolome)を精密に測定する技術です。

当研究室では、呼気凝縮液の分析による早期診断法の開発や、そのための固相誘導体化-ガスクロマトグラフ質量分析法による親水性代謝産物の精密分析技術の開発に取り組んでいます。→メタボロミクスについて詳しく見る


網羅的な化学分析を通して生物の仕組みや環境汚染状況を解読

生物には、生育環境やストレスに対応し生体成分を調節することで適応する生存戦略が備わっています。化学物質の暴露などによって引き起こされる細胞内代謝の変動を調査するために、最先端の生体物質の網羅的な分析技術(リピドミクス、プロテオミクス、メタボロミクス等)やイメージング技術、多変量統計解析によりバイオマーカー等の有用な情報の抽出技術が利用されています。

当研究室では、生体物質の網羅的な分析技術の開発に取り組み、これらを駆使した医薬品の安全性試験や有害化学物質の環境影響診断への応用を検討しています。


ナノ・マイクロバイオデバイスの創製と応用

ナノ・マイクロデバイスとは、1mmの1000万分の1から1万分の1スケールの構造体で、生体物質や化学物質の分離・検出デバイスの他、細胞培養足場として応用することが注目を集めています。マイクロデバイスでは、チップ上に加工されたマイクロ流路を利用して、混合・反応、抽出、分離などの化学反応を行うことが可能です。サイズを小さくできるので従来の方法と比べて必要とされる試薬や試料の量が微量で済むという利点があり、近年、これらは自動分析、そのための試料等の取扱いなどの分野で技術開発が進んでいます。

当研究室では、新規のナノ・マイクロ構造体構築し、これまで困難であった生体分子の高速一斉分析を目指しています。また、マイクロ流体デバイスを応用した単一細胞分析法の開発にも取り組んでおり、平均的な観測・計測手法では知ることができない、個々の細胞における生命活動の詳細を検討しています。


バイオサイエンス研究を支える分析技術の高度化と最先端のマイクロ化学計測システムの構築

  1. ナノバイオデバイスの創製と単一細胞分析(Single cell analysis)技術の開拓と応用
  2. バイオサイエンス研究を支えるマイクロ化学計測システムの構築
  3. 代謝関連物質(Metabolome)の分析による未病診断や栄養学的評価のマーカー探索(メタボロミクス)
  4. 化学物質の生物影響を脂質の変動を通して予測する(リピドミクス)
  5. 生物機能を利用した有用物質の効率的生産および有害物質の捕集分解に関する技術の開発
  6. 微生物バイオマーカーと燃焼生成炭素粒子の分析による環境変動解析

三次元ヒト細胞組織体の構築とそれを利用した医薬・香粧品等の機能解析

  1. ヒト表皮再構築における遺伝子発現と物質代謝過程の解明
  2. ヒト表皮角質を試料としたセラミド類の一斉分析と個人差解析手法の確立
  3. ヒト上皮/内皮組織のデバイス化と腫瘍マーカー探索への応用