第7回生命科学セミナー
日時: 11月15日(水)17時〜
場所: 研究3号棟12階 セミナー室 G
 
演題1
池田 瞳 さん
免疫制御学研究室 D3
「ヘルペスウイルスのがん標的化改変に応用可能な抗体を選別する方法の開発」

  がんに対するバイオ医薬の新たな候補として、がん細胞を選択的に破壊する腫瘍溶解性ウイルス療法が注目されている。欧米では、弱毒化した腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス(oHSV:oncolytic HSV)である IMLYGICが2015年に医薬品承認され、本邦においても同種のoHSVであるG47ΔやHF10などの第Ⅱ相臨床試験が進められている。我々は、より殺細胞能が強く全身投与も可能となるoHSV療法の開発を目指し、細胞表面に発現するがん関連抗原を介してのみ感染する受容体標的化oHSV(RR-oHSV:Receptor-retargeted oHSV)を開発した。このRR-oHSVでは、ほとんどの細胞に存在するHSVの本来の受容体との結合を不能とする遺伝子改変が加えられており、HSVの細胞内侵入を司る部分に挿入された単鎖抗体により標的抗原を介してのみ感染し殺細胞効果を発揮する。挿入する単鎖抗体には、標的抗原に結合し、その後にRR-oHSVの細胞内侵入を仲介する特性が求められる。本セミナーでは侵入標的化HSVに好適な抗原・抗体セットの探索法を開発したことを報告する。
 
演題2
下澤 誠 さん
ゲノム病態医科学研究室 D3
「大腸がん細胞においてPLCδ1はオートファジーを制御する」

  ホスホリパーゼC(PLC)はイノシトールリン脂質代謝においてセカンドメッセンジャー産生のトリガーとなる酵素である。我々はこれまでの研究で,PLCδ1の発現低下が大腸がん細胞の増殖・浸潤能を亢進させていること, KRAS/MEK経路によってPLCδ1の発現が抑制されることなどを明らかにしてきた。マクロオートファジー(以下,オートファジー)は,正常細胞では機能不全となったオルガネラ等を分解し細胞恒常性を維持する機構であるが,がん細胞では栄養飢餓状態や薬剤への抵抗性を高める。本研究では,KRAS活性変異のある大腸がん細胞でオートファジーが亢進しているとの報告から,大腸がん細胞におけるPLCδ1の発現低下がオートファジーに影響を及ぼすかについて検証を進めた。その結果,大腸がん細胞においてPLCδ1の発現低下はオートファジーを亢進し,栄養飢餓状態や抗がん剤への抵抗性を高めていることが示唆された。
 
演題3
鈴木 拓真 さん
分子生化学研究室 D3
「腫瘍溶解活性を増強したがん標的化ヘルペスウイルスの開発」

  がんの新規治療法のひとつとして腫瘍溶解性ウイルス療法が注目されている。欧米では既に腫瘍選択的増殖性を付与した単純ヘルペスウイルス(HSV)を基盤とする腫瘍溶解性HSV(oHSV:oncolytic HSV)が医薬品承認されるに至っており、本邦でも同種のoHSVを用いた第Ⅱ相試験が進行中である。多くの臨床試験結果から、oHSV療法の安全性は確認されつつある一方で、より有効性の高い手法の開発も進められている。我々は、殺細胞能の強いoHSV療法の開発を目指し、がん細胞の表面に高発現する分子を介してのみ感染する受容体標的化oHSV(RR-oHSV:Receptor-retargeted oHSV)を開発した。本セミナーでは、このRR-oHSVのウイルス外被糖タンパク質に膜融合を促進する点変異を施すことにより、標的分子特異的感染能力を損なうことなく腫瘍溶解活性をさらに増強する試みについて報告する。
 
問い合わせ先:
生命科学セミナー担当
分子生化学研究室 柳 茂