第8回 生命科学セミナー

 

 日時: 2月 8日(水)17時~
 場所: セミナー室 G

 

講師1:米田敦子助教(ゲノム病態医科学研究室)
演題:細胞移動に関わる複合シグナルの解読と細胞移動の制御を目指して
 細胞移動は、発生、創傷治癒など動物の恒常性維持に必須な細胞挙動であることに加え、がんをはじめとした様々な疾病の進行に関わる。環境や刺激に応じて、細胞は進行方向に細胞膜を伸展させ、表面受容体を介して細胞間隙に存在する細胞外マトリックス分子や別の細胞上の接着因子と結合(接着)する。この反応により時期的、空間的に多重のシグナル(リン酸化反応、タンパク質相互作用、アクチン細胞骨格の再構成など)が惹起され、細胞の重心移動、後方での脱着と収縮という一連の反応を繰り返して、細胞は移動する。細胞移動の複雑な分子機構の解読と制御方法の開発を目指し、我々はこれまで、インテグリンなどの細胞外マトリックス受容体からの複合的シグナルの解読、プロテインキナーゼPKCやROCKによるアクチン細胞骨格再構成の新しい制御機構、インテグリンの活性制御機構の解明を行ってきた。これらの研究を紹介するとともに、リン脂質代謝と細胞移動に関する最近の研究データについても紹介する。

 

講師2 : 山内淳司教授 (分子神経科学研究室)    

演題:脳の髄鞘(ミエリン)形成不全に対する創薬標的分子の探索研究
 脳や脊髄などに存在する髄鞘(ミエリン)はオリゴデンドロサイト(グリア細胞)が分化したもので、神経細胞の電気伝導速度を数十倍に上昇させる重要な役割をもつものである。その発生過程は複雑で、通常の器官の発生に比べ、際だって長い期間を必要とする。その理由は、ミエリン形成後のグリア細胞の細胞膜の表面積が、形成前のグリア前駆細胞のそれと比較して100倍以上にもなるからである。このように構造および解剖学的な解析は進んでいるにもかかわらず、その発生を司る分子機構には不明な点が多い。一方、ミエリンには、多くの構造および機能不全疾患があると知られている組織としても有名である。私共は、これらの創薬標的分子の探索研究を行うにあたり独自のインビトロ培養システムを開発し、そのスクリーニングを行ってきた。結果として、いくつかの標的候補分子を明らかにすることができた。現在、この研究段階を疾患モデルマウスを用いたインビボ評価研究に移行し、検討を進めているところである。また、このユニークな培養システムをヒト型に変更しつつあり、その検討も進めている。