第5回 生命科学セミナー

日時: 9月13日(水)17時〜

場所: 4301講義室

 

清水 孝雄 先生

(国立国際医療研究センター 脂質シグナリングプロジェクト長)

「新しい脂質生物学を目指して」

 

 脂質は生体にとって重要な働きをしている。生体膜の主要な構成成分であり、特にグリセロリン脂質の両親媒性を利用して、外界から独立した「小部屋」(cell)を形成している。また、中性脂質の多くは効率の良いエネルギー源として働いている。コレステロールエステルやトリグリセリドがその例である。さらに、オータコイド(局所ホルモン)として近傍の細胞に働くものを生理活性脂質と呼び、プロスタグランディン、ロイコトリエンなどが代表的例である。この他に電気や熱を通しにくい絶縁体としての役割を果たし、タンパクの翻訳後修飾にも重要な役割を担っている。これら、脂質の持つ様々な機能は独立したものではなく、相互に連関しあっている。膜のリン脂質からホスホリパーゼの働きで生理活性脂質が産生されるし、また、リン脂質の脂肪酸組成によりコレステロールやトリグリセリドの運搬が調節されるなどである。脂質の持つ機能を統合的に理解し、その破綻が様々な疾患とどの様に関わるかを解明するのが、「新しい脂質生物学」の視点であり、10年ほど前に演者らが提唱した考え方である。

 今回の講演では、(1)膜リン脂質がどの様に多様性を獲得するか。(2)パルミチン酸(C16:0)を含むリン脂質は肺のサーファクタントとしての性質を示すこと。(3)アラキドン酸(C20:4)を含む脂質膜は生理活性脂質の貯蔵庫としてだけではなく、肝や小腸でのトリグリセリドの運搬に関わること。(4)栄養学的に重要と思われるDHA(C22:6)は網膜形成や精子成熟に重要な役割を果たすこと。を遺伝子改変マウスの表現形と、液体クロマトグラフィー・質量分析によるリン脂質組成解析のデータから示す。

 

参考文献

1. Shimizu, T. (2009) Lipid mediators in heath and disease. Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 49, 123-150.

2. Harayama, T. et al. (2014) Lysophospholipid acyltransferases mediate phosphatidylcholine diversification to achieve the physical properties required in vivo. Cell Metabolism 20, 295-305

3. Hashidate-Yoshida, T. et al. (2015). Fatty acid remodeling by LPCAT3 enriches arachidonate in phospholipid membranes and regulate triglyceride transport. eLife 4, e06328

 

問い合わせ先:

生命科学セミナー担当

分子生化学研究室 柳 茂