第4回生命科学セミナー
日時: 7月19日(水)17時〜
場所: 研究3号棟12階 セミナー室 G

 

演題1
糸賀 響 さん
生命物理科学研究室 D3
「コロイド粒子を内包したベシクルのシミュレーション」

  細胞は、生体高分子を高密度で内包している。この閉じた膜と内包物は互いに相互作用し、その結果として膜の形や内包物の分布が決まると考えられている。細胞を単純化したモデルを用いた夏目らの実験から、ある条件下では、膜が数珠状に変形することが観察されている。この現象は細胞分裂などの変形を伴う現象に関連していることが予想される。しかし、その変形を誘導する物理的・化学的要因については明らかになっていない。そこで我々はこの現象を解析するため、物理的なモデルを用いて研究を行った。このモデルは膜を三角格子で表し、内包物として球を封入したものである。膜と粒子それぞれに複数の弾性的な特性を付加し、粒子を内包した閉じた膜(ベシクル)のモデルを構築した。このモデルを用いた計算から、粒子間の数と長距離斥力が、ベシクルをくびれた形状に変形させることが分かった。本セミナーでは、我々が用いたモデルについて説明し、内部の粒子が誘導する形状と分布に関連した報告を行う。

 

演題2
伊藤 昭博 教授
細胞情報科学研究室
「NAD+依存性リジン脱アセチル化酵素SIRT2による細胞運動制御機構と阻害剤開発研究」

SIRT2は主に細胞質に局在し、発がんと密接に関わることが示唆されているNAD+依存的なリジン脱アセチル化酵素である。我々は、SIRT2ががん細胞の転移浸潤に重要なアクチン結合タンパク質であるコータクチンの脱アセチル化酵素として機能すること、アセチル化によるコータクチンの新しいがん細胞運動制御機構を明らかにしたので紹介したい。また我々の結果は、SIRT2ががん転移治療薬の分子標的になる可能性を示唆する。そこで、理研NPDepo化合物ライブラリーからSIRT2阻害物質の探索を行ったところ、SIRT2阻害活性を有する複数の化合物を得た。そのうち、選択的にSIRT2を阻害した化合物とX線共結晶構造解析を行った。その結果、本化合物は、構造変換にともない生じる基質結合ポケットの奥の疎水的空間に入り込むことにより、SIRT2の活性を阻害することを見出した。本発表では、この疎水的空間に結合してSIRT2の活性を制御する内因性代謝物の同定にも成功したので、合わせて紹介したい。

 

問い合わせ先:
生命科学セミナー担当
分子生化学研究室 柳 茂