高校生物発展講座

2018.01.24

■「高校生物発展講座」のアンケート結果の一部を紹介させて頂きます。

 

「講座の『内容』は適切でしたか」

 → 大変有意義だった:44%,有意義だった:51%,あまり有意義ではなかった:5%,有意義ではなかった0% (講座4回の平均)

 

「来年もこの講座を実施した場合『知人に紹介したい』ですか」

  → ぜひ紹介したい:41%,紹介したい:53%,あまり紹介したくない:6%,紹介したくない:0%

 

【参加者の感想】

・「先端の知見を伺えるのはとても貴重な機会です。ぜひ来年以降も続けて頂きたい」

・「事前に資料をお送りいただけるのは有難い。講義の途中に質問時間を確保しての進行もよいと思います。毎回、新しい知見や研究に接することができ、勉強になりました。また、本校の受験生には、貴大学ではどのような研究を行う(勉強できる)のか紹介できることも幸いでした。同じ学科名でも大学によって研究されていることが異なることを思うと、大変参考になりました。」

・「生命科学の新たな知識を聴く機会はなかなかないので貴重な講座であると思う。」

 

第1回高校生物発展講座「微生物発酵による有用物質生産」 講義担当:時下進一(応用微生物学研究室)

受講者28名 9/22(金)18:00~ 千代田キャンパス

 

1) 高校教科書での記載例

2) 微生物の分類

3) 細胞の表層構造(グラム陰性菌,グラム陽性菌)

4) 呼吸(好気呼吸,嫌気呼吸)と発酵(乳酸発酵等)

5) 発酵食品の製造(醤油,納豆,チーズ等)

6) 発酵の工業利用(アミノ酸発酵,抗生物質)

 

 高校の教科書に記載されている微生物に関する記述について確認後,大腸菌O157の「O」は菌体表層の糖鎖構造の違いによって分類されたものであることが解説され,微生物学の基本から工業的な利用まで講義は広範囲にわたって行われました。

 受講者からは「発酵は嫌気呼吸なのか」「原核生物と真核生物で細胞内に物質を取り入れる仕組みは同じなのか」「酸素が過剰であれば,発酵は行われないのか」など多くの質問が寄せられ,講座は大変盛り上がりました。

 

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第2回高校生物発展講座「ゲノムとエピゲノム」講義担当:松下暢子准教授(分子生化学研究室)

受講者24名 10/20(金)18:00~ 千代田キャンパス

 

 DNAの塩基配列を変えることなく遺伝子のはたらきを決めるしくみである,エピジェネティクス研究の重要性を,もともとは同じゲノムをもつ一卵性双生児でも,遺伝的要素が大きいと言われている多くの疾患の発症に差があることなどから確認され,講義が始められました。

 

1) エピジェネティクスとは?

2) クロマチンとエピジェネティクス

3) エピジェネティクスのメカニズム

4) エピジェネティクスの働き

 

 現行の「生物」教科書のコラム欄等に,ヒストンのアセチル化による転写調節が記載されていることもあり,先生方は最新の研究動向を交えた講義に積極的に質問し,熱心にメモをとりながら受講されていました。

 

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第3回高校生物発展講座「モデル生物を用いた脳科学研究最前線」講義担当:森本高子 准教授(分子神経科学研究室)

受講者25名 11/17(金)18:00~ 千代田キャンパス

 

大学の神経生物学で必要とされる用語・内容の多くが高校「生物」の教科書に記載されていることから,高校「生物」の「刺激の受容と反応」の学習内容が非常に高度であると確認・共有され講義が始められました。

 

1) 高校教科書での神経生物学・行動神経学の取り扱い

2) 神経生物学研究とは?

3) ショウジョウバエと神経生物学

 

ニューロンに接続する複数のシナプスで伝達される興奮・抑制の情報やそれぞれの強弱がニューロン内でどの様に統合され,その際に何が起こっているのか、またそれらがどのようにして軸索小丘における活動電位の発生に至るのか、などの高校でも大学でも教えにくい分野について質疑応答が繰り返され,意見交換を交えながら講座が進められました。

講座の後半で,精神疾患モデルハエとしてショウジョウバエ幼虫を活用した研究が紹介された際には,受講者から驚きと笑いの声が漏れ和やかな雰囲気で講義が進みました。このような最新の研究内容が受講者から高校生に紹介されることが期待されます。

 

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第4回 高校生物発展講座「味を感じるしくみ:味覚受容体・味神経・大脳皮質味覚野」講義担当:井上雅司 講師(分子神経科学研究室)

受講者16名 12/15(金)18:00~ 千代田キャンパス

 

はじめに,高校生物でも行われることが多いギムネマ茶による甘味阻害の実験の,ギムネマタブレットをすりつぶして粉状にしたものを使用する簡易的な方法が紹介され,受講者がギムネマの粉とチョコレートで実際に体験することから講座が始められた。

 

1) 味覚とは? 味細胞と味覚の伝導路

2) 味の種類味はどのように識別されるか

3)「美味しい・不味い」受容と拒絶

学習性の嗜好・嫌悪

4) 甘味・苦味受容体分子はGPCR

5) 全身の臓器の細胞に存在する甘味・苦味受容体

6) 脳における味情報表現

 

講義では,甘味受容体や苦み受容体が口の中にある味蕾の味細胞だけでなく,胃や脳などの細胞にも存在していて細胞外の環境をモニターしていること,また,生まれたときから甘味が嗜好され,苦みが忌避されるが,学習によって苦みもおいしく感じるようになることなど,生物の授業で生徒に紹介できそうな,興味深い話題も解説された。講義の最後には,おふくろの味の記憶,料理人の味覚の繊細さ,食中毒の記憶は1回でも忘れない,植物に味覚受容体はあるのかなどについて受講者から質問され,和やかな雰囲気の中,今年度最後の講座が終了しました。

 

金曜日の夜の講座にもかかわらず,多くの先生方に「高校生物発展講座」にご参加頂きありがとうございました。

来年度の講座の日程や内容等については,詳細が決まり次第ホームページ等でご案内致します。多くの先生方のご参加をお待ちしております。

2016.11.21

■「高校生物発展講座」のアンケート結果の一部を紹介させて頂きます。

 

「講座の『内容』は適切でしたか」

 → 大変役に立った:51%,役に立った:46%,あまり役に立たなかった:3%,役に立たなかった0% (講座6回の平均)

 

「来年もこの講座を実施した場合『知人に紹介したい』ですか」

  → ぜひ紹介したい:46%,紹介したい:53%,あまり紹介したくない:0%,紹介したくない:0%

 

「役に立った」「紹介したい」との好評を頂きありがとうございました。次に,参加者の感想を紹介します。

 

【参加者の感想】

・「毎回,講師の先生が熱心に話して下さり,とても勉強になりました。途中で質問タイムが有り,良く分からなかった所もフォローできたのが良かったです。次回もぜひ参加したいです。」

・「とても専門的な内容で,程よく高校生物とリンクしていたので分かりやすかったです。今後の授業に活かしていきたいです。」

・「大学の先生方の科学的な視点やアプローチ,研究の手法などを知ること,講義だけではなく,質疑に時間を割いて下さったのはありがたかったです。伺った内容のうちいくつかは,早速生徒に話しました。」

・「(他大学でも)エクステンション活動の一環として同様の取り組みがなされているのですが,内容は貴学に及びません。むしろ無料で公開されていることに驚きと感謝の念を抱いております。今後有料でも構いませんので,この講座を導入としてより深く知りたい教員のための講座などが 構想されても良いのではないかと思いますし,実施された暁にはぜひ参加させて頂きたいと思います。」

 

■講座の内容(全6回)

 

第1回「生命はどこでどのように誕生し,進化したか:最新の研究」講義担当:山岸明彦(極限環境生物学研究室) 9/9(金)18:00~千代田キャンパス

講座は,以下の各テーマについて20分程度の講義の後に,参加者のThinking time 15秒(一人で講義内容を確認),Buzz time 30秒(隣に座った二人で講義内容の確認),質問時間という,バズ学習(buss session)を取り入れた形式で実施されました。

 

170519_1.jpg1.地球の生命は何でできているか
2.化学進化:生命の起源前の有機物合成
3.たんぽぽ計画:国際宇宙ステーション上での微生物や宇宙塵,有機物の採集計画
4.生命がどう誕生したか:RNAワールド

「生命誕生の場は海底熱水噴出孔ではなく,陸上こそ生命誕生の場であると考える研究者が増えている」「最初の生命はRNA生物(DNAではなく,タンパク質でなく)であった可能性が非常に高い」といった最新の研究報告に,参加者からの質問は尽きず講義時間を延長するほどで,参加された高校の先生方の感想も好評でした。

 

 

第2回「初期発生を司る遺伝子群」 講義担当:中村由和(ゲノム病体医科学研究室) 9/23(金) 18:00~千代田キャンパス

 ショウジョウバエの発生における前後軸形成,体節形成,体節の個性化を担う遺伝子群について遺伝子間の相互作用に注目しながらの解説が行われました。

 

1.発生を司る遺伝子研究のモデル生物

  ‐ショウジョウバエ‐

2.母性効果遺伝子による前後軸形成制御

  卵形成過程におけるbicoid,nanos mRNAの局在機構など

3.分節遺伝子の働きによる体節形成

  ギャップ遺伝子,ペアルール遺伝子,セグメントポラリィティ遺伝子の働きなど

4.ホメオティック遺伝子による体節の個性化

  ホメオティック遺伝子の発現様式,マウスにおけるホメオティック転換など

 

 

 

「卵極性遺伝子は母性効果遺伝子の一種といってよいのか?」など,用語の定義に関する質問が多くなされましたので,専門用語の定義や関係性を整理しながら講義がすすめられました。その結果,講義時間を30分延長となりましたが,高校の先生方は熱心にメモをとりながら講義に参加していました。

 

 

第3回 「葉緑体と光合成 - その起源と進化」 講義担当:佐藤典裕(環境応答植物学研究室) 10/7(金) 18:00~ 千代田キャンパス

 

葉緑体の光合成機能をその起源や進化も含めて解説しました。

講義は「種々の光合成色素と光化学系」「光合成電子伝達系と光リン酸化系」「カルビン・ベンソン回路、光呼吸」「C4植物、CAⅯ植物」のそれぞれについての短時間での解説と質疑応答という形式で進められました。

講義の最後には、葉では「ふるい効果」「寄り道効果」によって、緑の光の大部分がクロロフィルに吸収され、光合成で有効に利用されていることなど、最新の研究内容も紹介されました。

「暗反応」という用語をもう使わない方が良いのか確認される先生や、講義が終わる直前に到着して光合成に関する質問だけをして帰宅された先生など、向学心旺盛な先生方が参加されています。

 

 

 

第4回 「自然免疫細胞による“非自己”と危険な自己“の認識」 講義担当:田中正人(免疫制御学研究室) 10/21(金)18:00~ 千代田キャンパス

 

高校生物は,一つ一つ丁寧に覚えなければならない暗記科目の印象が強いが,免疫は「生体内でのミッションがわかりやすい」「病気と関係が深くイメージしやすい」ため,ストーリー性を持たせて説明しやすい分野である。しかし,高校の教科書には,免疫が「どのようにして,“まだ見ぬ敵”に対処して」「どのようにして,味方(自分)への攻撃を防ぐのか」について,あまり書かれていない。このような問題意識を最初に提示し,本講義の位置付けを明確にしてから講義が進められた。

 講義は,自己と非自己を識別し,非自己を排除する生体防御機構について,自然免疫と獲得免疫では応答戦略が全く異なることを順に解説し,最後に抗原提示細胞について補足説明を行った。

 本講座も4回目となりましたが,講義7割,質疑応答3割程度が定着しつつあり,参加者からの熱心な質問が絶えない熱い講座になっています。

 

 

 

第5回 「組換え植物の研究での利用の現状と問題点」 講義担当:野口航(応用生態学研究室) 11/4(金)18:00~ 千代田キャンパス

遺伝子組換え植物について,高校「生物」の教科書に「作製方法」と「応用例」が記載されていることを確認してから講義が進められた。

 

1) 高等学校の教科書での記載例

2) モデル植物などでの遺伝子組換え実験

3) 研究での遺伝子組換え植物の利用例

4) 組換え植物の応用例

5) 植物における新育種技術(NPBT)

6) 安全性や環境への影響について

モデル植物のシロイヌナズナを例に,遺伝子組換え実験の基本を解説後,様々な遺伝子導入方法から新育種技術(NPBT)まで,品種改良や遺伝子組換え技術の歴史的な変遷を含めて講義が行われました。

最新の科学技術の現状だけでなく,遺伝子組換え農作物の栽培状況や安全性及び環境への影響まで広範囲にわたって講義が行われました。

 

 

第6回 「ヒトゲノムとその情報の利用(ヒトゲノムの構成から遺伝子多型、SNPの利用等)」 講義担当:田中弘文(細胞制御医科学研究室) 11/18(金)18:00~ 千代田キャンパス

ヒトゲノム解読の完了(2003年)によって解明されつつある,個人のゲノムの違いと形質や成人病や薬の効き目等の違いとの関係など,ヒトゲノム研究の近年の話題について基礎的な講義が行われた。

 

1) ゲノム

2) 遺伝子多型

3) 病気と遺伝子

4) オーダーメイド医療

最先端のヒトゲノム研究の状況や最新の研究成果についての講義の中に「一人に含まれるDNAを全てつなぎ合わせると地球を約 300万周分」「全ヒトゲノムの解読が十数年前には数百億円から数千億円かかったが現在は約10万円で可能」などの話題も紹介され,参加された先生方からのため息や感嘆の声があがる和やかな雰囲気での講義になりました。

 

 

金曜日の夜の開講にもかかわらず,毎回多くの先生方に「高校生物発展講座」にご参加頂きありがとうございました。

来年度の講座の日程や内容等については,詳細が決まり次第ホームページ等でご案内致します。多くの先生方のご参加をお待ちしております。